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ステンレス鋼は「錆びにくい鋼」と言われ、鉄(Fe)とニッケル(Ni)に約10.5%以上のクロム(Cr)を含有した合金です。一般的な使用環境で強い耐食性を示します。これはステンレス鋼に含有しているクロムに酸素と水酸基が結合して、表面に緻密な密着性の高い不働態化被膜を形成するためです。
しかしこの不働態化被膜は1~3nm(100万分の1~3mm)と極めて薄い原子レベルの被膜であるため、使用環境によってこの不働態化被膜が破壊され腐食が発生します。この腐食を防止するのが電解研磨法で代表される不働態化被膜処理です。
ステンレス鋼の腐食系統図を下記に示す。
 
腐食系統図
※クリックすると拡大して見れます

ステンレス材の使用に当たって問題となる主な腐食は孔食腐食、隙間腐食、粒界腐食です。これら腐食のメカニズムを説明いたします。


孔食腐食とは

孔食腐食反応概念図

ステンレス材表面でハロゲン化物イオンが存在すると不働態化成分と結びついて、不働態化被膜を破壊します。特に不働態化被膜の不完全な部分の破壊が起こります。破壊部はアノード(陽極)となり、他がカソード(陰極)となって、電池反応が起こります。
アノード部では溶出金属が下記の加水分解反応によってプロトンが生成して酸性となります。


ステンレス材の主成分であるFe,Cr,Niの内Crイオンが特に加水分解反応を起こします。これによってアノード部では、より腐食性となるため右図のように電池作用によって腐食が進行します。これが孔食腐食です。


隙間腐食反応概念図

隙間腐食とは

右図の様に、ステンレス材間に隙間が存在すると、隙間内では溶存酸素が隙間外に比べて酸素の供給が少なくなるため、酸素が発生する酸化反応が起こり、隙間外では酸素供給が多いので酸素を消費する還元反応が起り酸素濃淡電池を形成します。また、酸化によってプロトンが生成して液pHが不働態化被膜破壊pHまで低下して隙間内では金属が溶出します。また、溶出した金属イオンは、下記の加水分解反応によってプロトンの蓄積が起こり、

電気的に中性を満たすため、Cl-イオンなどと化合して酸を生成し、更に環境が厳しくなり、腐食が進行します。これが隙間腐食であり、孔食腐食よりも発生し易いと言われています。


 

粒界腐食とは

オーステナイト系ステンレス鋼を約600~800℃に加熱することにより、右図のように、ステンレス鋼中のクロムと炭素の化合物(Cr23C6)が粒界に析出し、近傍のクロム濃度が不足して耐食性が低下します(この現象を鋭敏化といいます)。この鋭敏化現象は溶接加工による加熱、形状修正による加熱、歪抜きによる加熱によって発生します。この現象はSUS304材のように炭素(C)が多く含有するステンレス鋼ほど炭化クロム化合物を形成しやすくなり、粒界腐食が発生します。

 
 粒界にCr 23C6(炭化クロム)が析出して近傍のCr濃度が減少する。
Cr濃度概念図

 これらステンレス鋼の腐食を防止するために、不働態化被膜処理が必要です。

 不働態化被膜処理とは

不働態化被膜処理方法は電解法と硝酸法があります。

電解法

電解法には浸漬型電解研磨法と手動式隔膜電解研磨法に大別され、陽極の酸化反応によってステンレス鋼の表面にクロム酸化物被膜(Cr2O3)を形成させます。
これまでの電解研磨法は濃鉱酸を用いた技術でステンレス鋼の表面を1〜10μm程度電解溶解する”マクロ研磨”と表面の平滑性と光沢度を高める”ミクロ研磨”が起こります。バフ研磨条痕が無く、光沢度の高い仕上がり面が得られ、食品関連や医薬関係などの小・中型設備に多く施工されていました。
しかし、近年は手動式隔膜電解研磨法技術の開発によって化学プラントの大型設備の施工も可能となりました。手動式隔膜電解研磨法とは陰極冶具にろ布隔膜を取り付け、この隔膜に電解液を含浸させて施工する方法です。電解液は濃鉱酸を使用しないので環境に優しい電解研磨法です。施工面ではマクロ研磨の反応が主体で、仕上がり面の光沢はバフ研磨程度です。また不働態化被膜はクロム酸化物リッチ層のみが耐食性が高いとされていました。しかし、不働態化被膜の研究が進み、下表の様に(※1)、鉄酸化物も耐食性に寄与することが解り、ステンレス材の使用環境に合わせた、不働態化被膜組成の操作も行われています。
代表的な電解研磨の概念図を示します。電解反応では高電流密度条件で分極させ、陰極では④式の水の分解反応により水素ガスが発生し、陽極では①式の水の分解反応により酸素ガスが発生し、高酸化雰囲気下で②式と③式によってCrO主成分のCrリッチな不働態化被膜が生成します。

※クリックすると拡大して観れます

電解研磨概念図

電解法は電流量(C(クーロン)/㎠)によって不働態化被膜の厚さの操作が可能で、最大10~20nm程度まで施工できます。 

【電解研磨による不働態化被膜の耐食性要件】(※1)
これまでの不働態化被膜の耐食性要件は米国半導体製造設備技術基準(SEMATEC)を基に言われてきました。

    • 不働態化被膜層のTCr/TFe:1.5以上

    • 不働態化被膜層のCr-O/Fe-O:1.5以上

最近は、不働態化被膜層の酸化物の酸化数、結晶形、酸素量も重視されています。

    • 不働態化層の(Cr2O3+Fe2O3)/(Cr+Fe):高ければ好ましい。
    • 不働態化層のCr2O3/Cr゜比:高かければ好ましい。
    • 不働態化層のFe2O3/Fe゜比:高かければ好ましい。

 また、不働態化層のTCr/TFeの比よりもFe゜濃度が低い方が耐食性が優れています。


硝酸法

鉱酸のうち酸化剤として働くのは濃硫酸と硝酸です。濃硫酸は極めて危険なため使用できません。しかし、10-30%硝酸はステンレス材のFeを溶解し、CrをCr2O3に酸化してCrリッチの不働態化被膜を生成するので、以前から商業的に頻繁に使用されています。しかしこの方法はどこでも、誰でも簡単に施工できるため、発生する廃液や洗浄液の適格な処理がなされない場合があり、環境汚染が懸念されております。また施工時に有害なNO2(窒素酸化物)の生成を伴うため安全衛生の面から問題となります。

反応式

  4Cr+12HNO3→2Cr2O3+12NO2+6H2O
  Fe+2HNO3→Fe(NO3)2+H2
硝酸処理による不働態化被膜処理は施工が簡単である一方、酸化被膜の厚さは電解法に比べて薄く、耐食性が劣る結果となっています。また、ステンレス鋼と鉄鋼を溶接・接続した設備では洗浄不良によるFe(NO3)3の析出によるRouging発生を伴うリスクが高くなります。

 

不働態化被膜処理とは

耐食性を高める不働態化処理を解りやすく説明します。
 


手動式隔膜電解研磨法(NEP法)

Cr 2O 3 の不働態化被膜を施工。大型設備の施工も可能です。
 


手動式隔膜電解研磨法(光沢化処理)

Cr 2O 3の不働態化膜とミクロ研磨による光沢化施工となります。
 


電解洗浄法

表面の油、汚れを除去して美しい銀白色の仕上がりです。
 


電解脱脂法(バフ粕除去)

WG検査、合格レベルまで除去します。
 


焼け取り電解法

高い技術と経験で、高品質の仕上がりを提供します。
 


錆取り電解法

高い技術と経験で、あらゆる錆を除去します。
 


ペースト脱脂法

特殊なペーストで頑固な汚れも除去します。
 


セミクリーン工場

クリーンな工場で高品質の施工を実現しました。